新パーテル・パーテル1        史上最強の小説

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ロンドンの暴動のニュースを見て、古代ローマの聖山事件を思い出す今日この頃です。

一連の騒動が、何をもたらすのか、または、もたらさないのか。興味津々な今日この頃。

そんな中、聖山事件をモチーフにした何かを書きたいという欲求に負けた狼満です。


新パーテル・パーテル1    史上最強の小説

若人A: おい、どうするよ
路上にペタリと座り込んだ若者が、
隣に、これもまた座り込んでいる、
ホームレスの少女に話しかけています。

薄汚れたズボンに、ベットリとした髪。

少女の方は、多少ましな身なりはしていますが、
疲れ果てた目が、虚ろに、
渡された携帯の画面の中を泳いでます。
周りを見渡すと、フロントガラスを割られて炎上する車両。
ガラスが粉々に砕かれ、商品も根こそぎ持っていかれ、
魚の骨のようになったブティックが、目に飛び込んできます。

ホームレスの少女: いいんじゃない。行くよ
虚ろな目をした少女は、そう言うと立ち上がり、
東を目指して歩き出しました。
若人A: おい。チョット待てよ。俺も行くって
若人の追いかけるその少女の口が、何か呟いています。
ホームレスの少女: ・・・・聖山へ、・・・・聖山へ・・・
無意識のうちか、口が勝手に動くのか、
少女はブツブツ口を動かしながら、
ゼンマイ仕掛けのオモチャのように進んでいきます。

聖山へ、聖山へ。

東京のあちこちで起こる暴動の中、
そう呟く若者の姿が、チラホラと現れては消えて行きます。


新パーテル・パーテル     史上最大の小説

渋谷、聖山ビル。

築70年を超える、ヒビの入ったこのビルに、
若者達が集まりだしたのは、つい最近の事です。

そして、話は半年前、2012年8月3日にさかのぼります。
世は、グローバル化の最終局面。
法的人格(企業)は、安い労働力を求め、世界を転々とし、
各国市民が、不安の幾夜を過ごしたさ中、

突如、失われたモノがあります。

世界の市場から、製品の買い手が、
突然、消失してしまったのです。

それは、先進国、新興国の区別も無い事象でした。
物の値段は沸騰しますが、それを買う資金は、
世界の市民の手元にはありません。

各国政府は、狂ったように紙幣を発行しては、
金融市場にばら撒きますが、
貨幣の価値が暴落するばかりで、悪化する一方。

特に煽りを食ったのは、若い市民さん達です。
憤懣やるかたない若者さん達ですが、
それに火を点ける事件が起こってしまいました。

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